会計ソフトは使いこなせていますか?

私が会計事務所業界に入ったのは10年ほど前のことになります。最初の職場はごくごく一般的な税理士事務所でした。それでも、当時は既にパソコン会計は導入していました。最初に使った会計ソフトはTKCという税理士の互助会が作っているソフトで、個人的にはあまりなじめませんでした。今でも変わってはいないと思いますが、TKCの会計ソフトの特徴は遡及処理が出来ないことになります。つまり月次決算を毎月行い、一般締めた帳簿は絶対に変更できません。もちろんいい面もあるのでしょうが、率直な感想は中小企業にはなじみません。例え1円の打ち込みミスがあっても、前月の会計データは直せないので、損益修正という形で処理をしていかなければなりません。だから無理にTCKのソフトを使おうとすると、修正仕訳が膨大になる恐れがあります。

その後、いくつかの会計事務所で働きましたが、会計ソフトの進歩は目を見張るものがあります。当事務所でメインに使っている会計ソフトは弥生会計ですが、個人的にはもっともコストパフォーマンスは高いソフトだと思います。人気の裏返しとも言えますが、サポートセンターの電話がつながりにくいのが難点ですが・・・。

さて、当事務所に入ったスタッフに必ず教える弥生会計の機能があります。それは仕訳登録機能です。使っているという方も多いかもしれませんが、意外と職人気質な方はこういう機能を使いたがりません。でも、間違いなく使ったほうがスピードと正確性が格段に高まります。これは一旦、入力した仕訳を会計ソフトに覚えさせておく機能です。

例えば、普通預金から現金を下ろしたという取引があれば、この仕訳を登録しておくわけです。そして、次にこの取引が出てきた時は選択して、金額だけ変更しておしまいということになります。この機能のテクニックはどうやって仕訳を呼び起こすかということだと思います。登録仕訳は10個程度であれば、手動で選べば問題もないでしょう。しかし、取引数が数十、数百となってくると、いちいち選んでいるだけでイライラしてきます。そこで当事務所では、仕訳を登録する際に、必ず仕訳名とサーチキ―の登録もさせています。仕訳名というのは、前述の仕訳ですと、「●●銀行普通預金から現金引き出し」といった名称です。ではサーチキーとは。これは仕訳を呼び起こす際に使う暗号ですが、例えば三菱東京UFJ銀行であれば「mitubisi」とサーチキー登録をすると、次回、仕訳を呼び起こす際には「mitu」くらいまでいれるとこの仕訳が出てきます。なるほどと思われた方もいれば、ちょっと待てよと思われる方もいらっしゃるでしょう。サーチキーの意味は分かった。それが仕訳を呼び出すのに便利なことも分かった。でも、そのサーチキーってどうやって決めるんだと。確かにその通りです。前述の普通預金から現金を下ろしたという仕訳の場合、銀行名とサーチキーにしたい人もいれば、もしかしたら「gennkinn」とサーチキーを打ち込みたくなる人もいる。ルールがなければ、人それぞれバラバラになる。さもすれば、自分でも何をサーチキーにしていたか分からなくなると。その通りだと思います。そして、ここが解決できれば、会計ソフトの価値は格段に高まります。では、当事務所での使い方をご紹介してきましょう。当事務所では、人それぞれの主観を排除するために、かならず、通帳に記載されている文字をサーチキーに選択するように指導をしています。前述の普通預金から現金を下ろした場合、銀行ごとに表示は異なりますが、例えば三菱東京UFJ銀行であれば通帳には「カード」と記載されています。これは事実ですのでだれの主観でもなく、また必ず毎回通帳には同様に記載されます。つまり、三菱東京UFJ銀行で現金を下ろした場合には「ka-do」というサーチキーを使うわけです。このルール作りを最初にしておけば、どうだったかなあと迷うことはありませんし、担当者が変わっても混乱することもないと思います。こういう目線で一度自社の通帳を見返してみてください。同じ取引には全く同じ記載がされていることが分かると思います。

あと、ついでですが仕訳登録は最初の1ヶ月間は出てきた仕訳全てを登録しておくことをお勧めします。会社の取引というのは9割方は毎月同じような取引になっていると思います。一回全部登録しておけば次回からは9割は選択するだけで会計処理は終わりになるはずです。